脈拍数・心拍数

脈拍数、心拍数

バイタルサインの一つである脈拍数は誰でも、どこでも簡単に測定できる生体情報の一つです。

脈拍とは心臓が収縮し大動脈へ送り込まれた血液の圧波が、全身の動脈内に伝わり末梢の動脈で拍動として触れるものであり、末梢動脈までちゃんと循環できているかどうかを確認することができるものです。

通常は心電図で測定した数(心拍数)と同じ数となりますが、動脈の閉塞や狭窄、圧迫などの循環障害がある場合や不整脈がある場合などは心拍数と脈拍は必ずしも同じ数とはなりません

脈拍数は心拍数とは異なる可能性があるということを頭にいれておくことが、脈拍欠損を把握する上で重要になります。

脈拍数=心臓の拍動によって末梢の動脈(手首や頸部で触れる)が拍動した回数。

心拍数=心臓が全身に送り出す拍動数のこと。(心臓の収縮の数・心電図で表示される数)

繰り返しになりますが、不整脈では心臓の拍動があっても脈拍として触知できないことがあるので心拍数=脈拍数とはなりません。(心拍数と脈拍数の差を脈拍欠損といいます)

例えば心房細動の場合、心室収縮が起こってはいるが末梢まで脈波を伝達しえるだけの十分な血液駆出ができておらず、脈拍として触知できず、脈拍欠損となります。

脈拍欠損は低心機能であるほど生じやすいため、心房細動の患者では心拍数と脈拍数を同時に測定して脈拍欠損の程度を確認することが重要です。

心拍数の基準値

心拍数とは通常1分間の心室の収縮の数(心臓が拍動した数)をいい、単位はbpm(beats per minute)です。

心拍数は心電図でQRS波の頻度を測定するか、聴診器で心音を聴取することで測定できます。

成人の安静時心拍数は通常60〜100回/分です。

心拍数が100以上を頻脈(tachycardia)、60未満を徐脈(bradycardia)、といいます。

日本人間ドック学会の判定区分(2017年4月時点)では

とされています。健診を受けた方達で調べた所、心拍数は65±10/分が多く85/分以上は少なかったことから上記の判定区分となっているようです。

年齢によっても心拍数の基準値は異なり、

高齢者では60〜80回/分

中学生〜高校生では60〜100回/分

小学生では70〜110回/分

乳幼児では100〜140回/分

と幅があります。

脈拍欠損

上にも書いてありますが、心拍数と脈拍数の差を脈拍欠損(pulse deficit)といいます。

脈拍が何回かに1回とぎれてしまう状態です。

心房細動は脈拍欠損を最も生じやすい不整脈です。

心房細動では心室に血液が十分入り込む前に心臓が収縮してしまい、十分な血液量を動脈に送り出すことができず、結果末梢で触れる脈拍が弱くなり、脈拍として触れることができず脈拍欠損となります。

 

脈拍が早くなる原因

様々な原因で脈拍数、心拍数は早くなりますが主なものを以下にあげます。

1、緊張や興奮

緊張したり興奮している時は交感神経が優位に働くことで脈が早くなります。

2、貧血

貧血は酸素と結合して酸素を全身に運んでいるHb(ヘモグロビン)が減少している状態です。血液中のHbが減少し、酸素を全身にうまく送ることができない状態を補うため、心臓が活発に活動し、その結果脈が早くなります。

3、甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが出すぎて、その働きが強くでる病気です。心臓は甲状腺ホルモンに感受性が高いため、甲状腺機能亢進症では循環器系に様々な異常をきたします。刺激伝導系に作用すると心房の筋肉が影響を受け、心房細動をおこし頻脈となります。

4、睡眠不足、過労

自律神経は私たちの意識とは関係なく状況に合わせて脈を早めたり遅くしたりといった調節を行ってくれています。通常日中の活動時間帯には交感神経が活性化し、夜の休息時間帯には副交感神経が活性化しています。このようにバランスがとれているとよいのですが、長期的なストレスなどが原因でこの自律神経のバランスが乱れてしまいます。

ストレスを受ける→身体は興奮・緊張状態となる→交感神経が活性化をつづける。そして脈が早くなってしまうといった症状が起こることがあります。

5、アルコール

アルコールの心血管系への作用は単純ではありませんが、飲酒後に心拍数は上昇します。主に交感神経系の活動亢進によると考えられています。

6、喫煙

ニコチンは、心臓の洞結節を支配している交感神経節および交感神経終末の刺激と副交感神経節を抑制することにより心拍を増加させます。

7、薬の作用 

循環器系の薬剤は心拍数に作用するものがあり、その作用や投与量には注意が必要です。

8、脱水

循環血液量の減少に伴い、1回拍出量の減少を心拍数の増加で補おうとする結果、心拍数が早くなります。

9、感染、炎症

心拍数と運動強度

心拍数は運動強度とほぼ直線的な関係を示すので、運動時の生体反応の変化を反映する指標として重要な位置付けにあります。

下の図は運動強度をあげていった時(漸増負荷時)の心拍出量、1回心拍出量、心拍数、動静脈酸素較差のそれぞれの反応を示しています。

・心拍出量は運動強度に比例して直線的に増加する。

・心拍数は中等強度以上の運動では運動強度に比例して直線的に増加する。

・運動開始初期の心拍出量は1回拍出量の増加によってまかなわれるのに対し、1回拍出量が最大になる運動強度(約40%VO2max)以上の運動では心拍数の増加によって心拍出量の増加を手助けしている。

頻脈時の離床

頻脈は循環動態を不安定にするため、離床前、離床中にモニタリングすべき症状です。

通常血圧は、心拍出量と末梢血管抵抗の積で求められますので、心拍数が上昇すれば血圧も上昇します。しかし、心拍数が120拍/分を超えて上がれば上がるほど、心室への血液供給が追いつかなくなり心拍出量が低下し血圧が下がります。ただし、同じ頻脈でも上室性と心室性、その他の要因でも血圧は変動するため一概に何拍以上の心拍数では血圧が下がるとは決められません。

しかし、速すぎる脈は循環動態を不安定にするほか、心負荷増大により心不全に進展するリスクもあるため、120拍/分を超える頻脈はコントロールが必要と考えられます。

ここで注意が必要なことは、120拍/分以上の脈であれば絶対離床不可ではないということです。基準はあくまで目安なので、そこで立ち止まるということです。そして何故頻脈になっているのかを考えます。不整脈か、脱水はないか、貧血はないか、疼痛コントロールはできているかなど、原因検索し対策を考えます。場合によっては頻脈を許容し、離床を優先するということもありますし、抗不整脈薬が処方される場合もあります。最も重要な視点は、基準は目安であり患者のADLを制限するものではないということです。

(飯田祥、黒田智也、葛川元著 頻脈時の離床基準に関する調査報告 より引用)

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