心エコー検査(心筋梗塞)
心エコー検査
心エコーは高周波数の超音波を心臓にあてて返ってくるエコー(反射波)を機械で受け取り、心臓の様子を画像に映し出すことができる検査です。胸部レントゲン写真などのように放射線による被曝の心配がないので、繰り返し安全に行うことができます。
心筋虚血部位の壁運動異常は心電図変化より鋭敏に表れます。
エコー検査では虚血の範囲や責任冠動脈を推測することができます。
冠動脈支配領域に合致した壁運動異常があるか、壁厚の変化、線維化、瘢痕化、菲薄化などを観察します。
局所壁運動異常による急性心筋梗塞の診断率は90%を超え、WPW症候群や完全左脚ブロックのために心電図変化を判読しづらい場合でも、局所的な壁運動異常が観察できれば診断に有力な情報となります。
冠動脈の灌流域
右冠動脈の灌流域
→右心室と左心室下壁、下部心室中隔、右心房、洞結節、房室結節
左冠動脈の灌流域
→左前下行枝:心室中隔の右室前壁、心室中隔の前2/3、左室前壁、心尖部
→左回旋枝:左房、左室の側壁、後下壁の一部
壁運動の分類
正常 normokinesis
低収縮 hypokinesis
無収縮 akinesis
奇異性収縮 dyskinesis (心室中隔の奇異性運動:心室中隔が収縮期に正常とは逆方向の前方運動(右心室側に向かう動き)を示すことを指す)
心筋梗塞急性期に梗塞部位は無収縮や奇異性収縮を示すことが多い。
一般的に壁運動異常領域が広いほど、死亡、再梗塞、ポンプ失調、心室起源の不整脈、房室ブロックなどの合併症の危険が高く、高リスク群といえます。
心筋梗塞に伴う合併症
心筋梗塞に伴う合併症の観察のためにも心エコー検査は重要です。
心筋梗塞の機械的合併症である僧帽弁閉鎖不全、乳頭筋断裂、心室中隔穿孔、自由壁破裂、心室瘤、壁在血栓、心膜炎の有無などを観察します。
急性期僧帽弁逆流(乳頭筋断裂や虚血による乳頭筋や左室心筋の機能不全などが関与)
梗塞部伸展と左室リモデリング(梗塞に陥った心筋は周辺の健常心筋の収縮により伸展され菲薄化することがある。左室リモデリング(代償的な心臓の形態構造変化)の引き金になることもある。)
心室中隔穿孔(心筋梗塞により心室中隔の筋肉が壊死し穴があき左心室と右心室の交通ができてしまう)
左室自由壁破裂(破裂とともに急速に心タンポナーデに陥る)
壁在血栓(壁在血栓は広範囲に壁運動が低下した領域に出現しやすく、前壁梗塞症例の心尖部が好発部位)