血液検査(心筋梗塞)

血液検査

心筋梗塞では心電図検査も大事ですが、血液検査も当然重要な検査の一つです。

急性心筋梗塞の臨床診断で、心筋壊死を示す生化学マーカーの一過性上昇を認めることは必須で、これに加え虚血の存在を示唆する遷延性の胸痛や心電図所見のいずれかの存在が必要となります。

心筋梗塞で心筋が傷害されると心臓からは心筋マーカーとよばれる物質が血液中に流れでてきます。

血液検査でそれら数値の上昇の度合いや上昇のタイミングを見ることで、「心筋梗塞を起こしているかどうか」、「いつごろ起こったものか」、「梗塞は広範囲なのか」、等を確認することができます。

また、心電図にて特徴ある所見が現れない心筋梗塞も少なからず存在します。そんな時の診断の補助としても血液検査は大きな役割を果たしています。

心筋梗塞で上昇してくる心筋マーカー

心筋が傷害されると心筋細胞の中にあった酵素(心筋逸脱酵素)やCK、CK-MB、ミオグロビン、H-FABP、心筋トロポニン、ミオシン軽鎖などが上昇してきます。

 

↑「臨床検査のガイドラインJSLM2012」より

心筋マーカーの変動

心筋バイオマーカーの特徴はタイムラグが生じることです。

 

心筋が傷害されると心筋バイオマーカーはリンパ液、細胞間質を伝わって血中に現れるため時間差が生じてしまいます。

 

発症後3時間以内の超急性期ではミオグロビンやH-FABPが優れており、6時間以内の急性期では心筋トロポニンやCK-MBが優れた指標となります。

 

心筋トロポニンは10〜14日間異常値が持続するため発症から経過していても検出可能なことが、第1選択とされている理由です。

ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)

H-FABPは心筋の細胞質に豊富に存在する蛋白質で、心筋傷害後極めて短時間のうちに血中に流れでてきます。低分子であるために軽度の心筋傷害のレベルで循環血中に逸脱しやすい特徴があります。

 

およそ心筋傷害1〜2時間に上昇してくるので、従来の生化学マーカーでは診断できなかった発症2時間以内の超急性期心筋梗塞診断がこれにより可能となりました。

 

ラピチェックという検査キットを用いると、15分で陽性かどうかの判定が出ます。

(DSファーマバイオメディカルホームページより)

しかし腎機能障害例や骨格筋障害でも上昇し偽陽性を示すことがあり注意が必要です。

 

ミオグロビン

ミオグロビン(Myo)は心筋、骨格筋に存在する低分子蛋白です。

 

急性心筋梗塞で心筋障害が起こると速やかに細胞質から血中に逸脱するため、CK-MBやトロポニンTより早期に上昇してくる心筋マーカーです。

 

ただし骨格筋損傷でも上昇するため心臓特異性は低くなります。しかしこれを否定できれば心筋障害発現後にもっとも迅速に上昇をはじめるマーカーとなります。

 

AST

ASTは心筋や骨格筋、肝臓に多く含まれている酵素です。心臓や肝臓などに障害がおきると、血液中に流れ出てきます。

 

ALTは主に肝臓に存在しますが、ASTは上記のように肝臓のみならず心筋や骨格筋にも存在します。

 

AST、ALTが両方とも高値の場合、あるいはALTのみが高値の場合は肝障害の可能性が高くなりますが、ASTのみが圧倒的に高値を示す場合は心筋梗塞や筋疾患など肝臓以外の病態を考えます。

 

LDH

LDHとは細胞内で糖がエネルギーに変わるときに働く酵素(乳酸脱水素酵素)の一つです。

 

LDHは肝細胞のほか心筋、骨格筋、血球など全身のあらゆる細胞に含まれているので、心筋梗塞でもLDHの上昇がみられます。

 

心筋トロポニンT、トロポニンI

トロポニンは筋肉を構成する蛋白質の一つで、トロポニンT、トロポニンI、トロポニンCで複合体を形成し、ミオシンなどどともに心筋や骨格筋の収縮調節を担っています。

 

トロポニンTとトロポニンIは心筋壊死に特異的なマーカーであり、心筋細胞が傷害されると細胞成分が血液中に流れだし、血中濃度が上昇します。

 

ミオグロビンやH-FABPと比べるとやや遅れて上昇してきます。

 

心筋トロポニンは発症3〜6時間で上昇しだし約12〜18時間に最初のピークに達します。7〜14日まで上昇を維持するため発症して数日たって入院した場合でも急性心筋梗塞の診断が可能です。

 

発症約4日目に第二のピークを認め心筋細胞の不可逆的な壊死を示し、梗塞サイズや慢性期の心機能と相関します。

 

健常人では血液中には存在せずCK-MBと比べて感度・特異度が高いこと、簡便な全血迅速キットが可能となったことから測定の重要性が強調されています。

 

急性冠症候群によるリスクの層別化(トロポニンT>0.1ng/ml:高リスク、0.01<トロポニンT<0.1ng/ml:中等度リスク、トロポニンT<0.01ng/ml:低リスク)

 

CK(クレアチンフォスファキナーゼ)、CK-MB

CKは心筋細胞膜の傷害により血中に流れ出し、心筋梗塞発症後4〜8時間で上昇してきます。

 

発症からCKピークまでの時間は通常24時間ですが、冠動脈の再開通に成功すればwash out効果により12時間まで短縮します。

 

wash out効果:心筋が壊死している部分は冠動脈が閉塞して血流がない場合が多いので、CKが血流にのって反映されるのには多少時間がかかります。ですが、カテーテル治療によって冠動脈の再開通に成功すれば、それまでに壊死した分のCKが流れ出してきます(wash out)ので再開通したほうがピークが早くきてCK値も高くなる場合もあります。wash out現象のために数値が急激に上昇/低下することを利用して再灌流の成否を推測することもできます。

 

CKは筋肉(CK-MM)、中枢神経(CK-BB)からも出ますが、心筋に特異的なのがCK-MBです。CK-MBはより早期から上昇がみられ早期に消失します。骨格筋にも1〜3%含まれるため骨格筋疾患、痙攣、横紋筋融解症などでも上昇します。

 

心筋ミオシン軽鎖Ⅰ

心筋ミオシン軽鎖Ⅰは筋収縮蛋白です。急性心筋梗塞や心筋炎で上昇します。心筋梗塞発症後4〜8時間で上昇しピークに達するのは2〜5日後です。

 

心筋ミオシン軽鎖Ⅰの上昇は再灌流によるwash out効果を受けにくく、ピーク値は梗塞サイズに依存します。10〜20ng/mlであれば中等度の梗塞で、30ng/ml以上では広範囲の梗塞を示唆し、予後不良です。

 

 

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