急性心筋梗塞

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)は虚血性心疾患のうちの一つで、冠動脈にできた粥腫(プラーク)の破綻により血栓を生じ、それが冠動脈を詰まらせ、末梢側の血流が途絶して心筋が壊死する病気です。

冠動脈に生じた粥腫の表面を覆っている被膜が破裂することにより、そこに血小板が集まり、凝固能の亢進が起こり、血栓が作られます。

過労や感情的興奮、寒冷刺激、脱水、入浴、多量の飲酒なども引き金となります。

急性心筋梗塞では亡くなられる方の半数以上が発症から1時間以内に集中しています。

原因のほとんどは心室細動などの致死的不整脈によるものです。

発症から1時間以内に適切な処置を行い専門病院に搬送されることが非常に重要となります。

心筋梗塞は1分1秒を争う病気で、死に至る可能性も高い怖い病気という認識が必要です。

心筋には再生能力がないので、詰まった冠動脈を早期に再開通させ、心筋の壊死を最小限にとどめることが第一の治療になります。

急性心筋梗塞のゴールデンタイム(心臓のダメージを少なくすることができる時間)は6時間と言われており、6時間以内に再灌流療法(カテーテル治療)を受けて成功すれば壊死に陥る範囲を減らすことができます。

それを過ぎても12時間以内であれば再開通することで効果があると言われています。

症状

心筋梗塞の特長的な症状はまさに胸痛です。圧迫感や締め付け感を伴う不快な症状です。

ひとことに胸痛といっても、個人差があり

・重たい石を乗せられたような痛み

・胃がもたれるような感じ

・喉や歯の痛み

・左肩や腕の痛み

を訴えられる方もいます。

上記に加え前胸部の圧迫感、締め付け感(絞扼感)、心窩部痛などが30分以上続き、2〜6時間以上続くことも少なくありません。

冷や汗を伴って死の恐怖を感じることが多いと言われます。

注意しなければならないのは高齢者や糖尿病患者さんで、心筋梗塞を発症していても痛みの自覚がない場合があることです(無症候性心筋虚血)。

原因

心筋梗塞の原因として、動脈硬化がありますが、この動脈硬化を起こしやすくする危険因子として「高血圧」「高脂血症」「喫煙」「ストレス」「肥満」「糖尿病」「高尿酸血症」などがあげられます。

このうち「高血圧」「高脂血症」「喫煙」は心筋梗塞の3大危険因子とよばれるもので、これら危険因子が1つもない場合に比べて、どれか1つでもあれば2倍以上、2つあれば約5倍、3つともあれば10倍以上も心筋梗塞を発症する率が高いという報告があります。

急性心筋梗塞の診断

1、問診

2、身体所見

3、12誘導心電図検査

4、血液検査

5、心エコー

6、胸部X線写真

などをもとに診断を進め、ただちに初期治療が開始されます。PCIによる再灌流療法は、first medical contactから90分以内に初回バルーンを拡張することが目標にされています。

ST上昇型心筋梗塞の診断のアルゴリズム(日本循環器学会 ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン2013年改訂版 より引用改変)

リハビリテーション

心筋梗塞を発症して、冠動脈のカテーテル治療を行い虚血が解除されると症状はとれますが、それで終わりではありません。

心筋梗塞後には心身両面にデコンディショニング(調節がうまくできない状態)が起こります。このような状態からの回復を促すためにリハビリが必要ですし、今後の再発予防のためにも生涯にわたってのリハビリが重要になってきます。

カテーテル治療で冠動脈の閉塞がなくなったからといっても、壊死した心筋が戻ったわけではありませんので、健常時とは異なる反応がみられたり、バイタルの変動や不整脈などの合併症が起きることもあります。

心筋梗塞直後はベッド上安静となりますが、安静が解除されれば少しづつ動く範囲を拡大し、心臓に負荷をかけて大丈夫かどうかの負荷試験が数日にわたり行われます。

安全にリハビリを進めることが最優先ですが、過度の安静は逆にデコンディショニングをきたしてしまうので、しっかり評価を行い、その結果を患者自身にも伝え、問題なければ退院に向けて動く時間を増やしていくようシフトしていきます。

心筋梗塞後のリハビリにはクリニカルパスというものがあり、それに沿ってリハビリが進められることが多いと思います。

(日本循環器学会 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン2012年改訂版 より)

killipⅠ型で合併症がなく、血中CK最高値が1500U/L以上の場合は14日間クリニカルパスの適用となり、CK最高値が1500U/L未満の小梗塞の場合は10日間のパスを使用されることもあります。

必ずパス通りに進めなければいけないわけではなく、広範囲な梗塞や低心機能、僧帽弁閉鎖不全症の合併などがある場合、元々のADLが低い方などではパスを変更しながら進めていきます。

負荷試験の判定基準

ベッド上安静が解除され、初めて立つ時、初めて歩く時、歩行距離をのばす時には負荷試験を行います。

負荷試験では動く前後に12誘導心電図をとり、心電図変化がないことを確認します。

血圧、心拍数も同時に測定し自覚症状の有無も確認します。

それらの結果をもとに負荷試験が合格が不合格かを判定し、問題なければ安静度を拡大するといった流れになりますが、不合格の場合には薬物追加などの対策を行ったのちに再度同じ負荷試験を行います。

自覚症状の確認

胸痛の出現は梗塞後狭心症の存在を意味し、多枝病変や重症冠病変を有する患者に多いとされています。

重症冠病変における狭心症発作の出現は、しばしば再梗塞や虚血にもとづく急性左心不全、重症不整脈を惹起する可能性があり注意が必要です。

高齢者などでは虚血発作に伴う左室拡張期圧の上昇がしばしば胸痛を伴わない呼吸困難症状として現れることもあり、心電図でのSTのチェックが必要です。

長期臥床による身体的ディコンディショニングの結果として、あるいは不安や緊張にもとづく症状として、息切れと動悸を訴えることもあります。

心拍数の確認

心拍数の上限は一般に120/minとするのが一般的です。

120/minは、最大心拍数の65%(50歳)から68%(70歳)に相当します。

リハビリテーションの進行に伴う負荷量の増加と、身体的再調節による心拍数反応の正常化のバランスがとれていれば、心拍数は120/minをこえないのが通常です。

血圧の確認

血圧が低下した場合、起立性調節障害の可能性と重症虚血に伴う左室収縮不全に基づくものが考えられます。

運動により血圧が低下するものや、負荷量を増加しても至適な血圧上昇反応がみられないときには、重症冠病変の存在が示唆されます。

血圧に伴う合併症としては心筋酸素消費の増加に伴う虚血発作が考えられますが、さらに重要な合併症は心破裂です。

発症2週間以内は20mmHg、それ以降は30mmHg以上の収縮期血圧の上昇は進行基準として重要です。

急性期リハビリの注意点

心不全や不整脈、狭心症の残存などがない場合には心筋梗塞発症直後の絶対安静・臥床状態は1〜2日程度で終了し、徐々に活動範囲を広げていきます。

安静度を拡大する時には心筋梗塞の合併症に注意し、安全かつ速やかに入院中の日常生活動作を向上し、安全に自宅退院へ結びつけていきます。

心筋梗塞の合併症

急性期リハビリプログラムに必要な情報

・プロフィール:年齢、性別、職業、家族構成、学歴など

・運動習慣の有無、内容

・入院前のADLレベル

・既往歴

・入院前、入院後の臥床期間

・検査所見(心電図、心エコー、カテーテル検査、胸部レントゲン、血液検査)

・合併症の有無

・急性期の治療(ステントの有無、再灌流までの時間、カテコラミンの使用、IABPなどの使用)

・処方薬剤

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