心電図検査(心筋梗塞)

急性心筋梗塞の診断には12誘導心電図が不可欠です。

心筋逸脱酵素がまだ上昇していない心筋梗塞超急性期でも心電図ではT波の先鋭、増高といった変化を認めることが多く、急性心筋梗塞の診断の鍵となります。

急性心筋梗塞の典型例

・発症直後〜30分以内の超急性期→T波の増高・ST上昇

・発症後数十分〜数時間の急性期→ST上昇・異常Q波出現

・1日〜1週間までの亜急性期→冠性T波・ST上昇改善

・慢性期→冠性T波改善されつつある

1)T波増高がまず起こり→2)次にST上昇がみられ→3)発症後数時間から24時間以内に梗塞部誘導で異常Q波が出現→4)ST上昇の改善とともに数日後に冠性T波が出現

といった心電図変化がみられます。

画像引用「トーアエイヨーホームページ やさしい心電図の見方」より

発症早期

発症後すぐのきわめて早い段階ではQ波やSTの上昇はまだ明らかではなくわずかにT波の増高がみられることがあります。

急性期

発症後数時間から12時間くらい経過するとST上昇が明らかになり、その部位に一致して異常Q波がみられます。そして半日から数日の間に冠性T波が出現します。

 

回復期

数日後から1週間ぐらいになると異常Q波は変わりませんが、STの上昇が徐々に軽快、消失します。冠性T波も一時的に深くなりますが、その後次第に浅くなっていきます。

異常Q波:異常Q波とはR波の高さの25%以上の深さがあり、幅が広く0.04ms以上のQ波のことで心筋壊死の存在を表しています。

 

冠性T波:冠性T波とは心筋梗塞に認められる左右対称の陰性T波のことで心筋虚血の存在を表しています。

慢性期

異常Q波は持続して観察されます。冠性T波は多くの場合次第に消失し上向きになります。

心筋梗塞が生じた領域は心筋壊死部分とその周囲の心筋傷害部分、その外側の心筋虚血部分に分かれ、壊死部分は異常Q波、心筋傷害はST上昇、虚血部分は冠性T波として心電図上に表れます。そのため異常Q波、ST上昇、冠性T波が出現した誘導と、その変化の推移をみることによって心筋梗塞の部位と発症からの時間経過をみることができることになります。

ST変化の見方

J点を探します(J点とはQRS派の終わりでQRS波が急激にその角度を変える点です。QRS波のおわりがなだらかだとJ点を実際に判断するのは難しい場合も多いので、その際は「このあたり」が角度を変える点かなと判断してもよいようです。

つぎに基線を探します。基線はT波のおわりからP波の始まりを結んだ線になります。

基線よりJ点が上にあれば上昇、下にあれば低下と判断します。

基線からJ点までの距離はST変化の幅となり1mm(1目盛)以上の上昇で有意な上昇と判断します。

ST低下と上昇

冠動脈は心室の外側(心外膜側)を通っていて、外側から内側(心内膜側)へ血管をのばしています。

そのため血流が減ると、内側の心筋から虚血を生じてきます。

心内膜側だけの虚血は、心電図ではST低下として現れます。

虚血が外膜側まで及ぶと内側から外側までの筋肉全体が虚血になります。

これを貫壁性虚血といい、心電図ではST上昇として現れます。

心筋梗塞の部位診断

ST上昇、Q波の出現部位から、心筋梗塞の部位診断ができます。

前壁中隔:V1〜V4 (主な閉塞枝:左前下行枝

側壁:Ⅰ、aVL、V5、V6(主な閉塞枝:左前下行枝、左回旋枝

下壁:Ⅱ、Ⅲ、aVF(主な閉塞枝:右冠動脈

後壁:V1、V2のR波増高、ST低下、T波増高(主な閉塞枝:左回旋枝、右冠動脈

右室:V3R〜V5RでのST上昇(主な閉塞枝:右冠動脈

下壁梗塞では右側胸部誘導(V4R〜V6R)も記録し右室梗塞を示すST上昇がないか確認します。V4Rを中心として1mm以上のST上昇があれば心電図上右室梗塞と診断できます。

心筋梗塞症例の中でST上昇を示す例は50%程度に過ぎず、約40%はST低下、陰性T波、脚ブロックなどの非特異的な心電図異常を、残る10%は正常心電図を呈するとされています。

詳細な部位診断

(異常Q波の出現部位から判断)

右室梗塞

右室は右冠動脈より分枝する右室枝により栄養されているため、右室枝よりも近位部で右冠動脈が閉塞すると右室梗塞をきたします。

心筋梗塞でSTが上昇する理由

・冠動脈は心室の外側(心外膜側)を通っていて、外側から内側(心内膜側)へ血管をのばして心筋を栄養しています。そのため、血流が減るとまず心内膜側の心筋から虚血を生じます。

・心電図では基本的に心筋内部の電流が電極に向かってきた時に上向きの波形を示し、遠ざかる時に下向きの波形を示します

まずこの2つのことを頭に入れてください。

虚血によって心筋への血流が阻害されると、心筋は内部のほうからダメージを受けます。そしてダメージを受けた心筋からは炎症による障害電流が発生します。

心筋では傷害された部分と正常な部分が隣接する場合、傷害された部分から正常な部分へと電流が流れます。

心筋虚血は心臓内の心内膜側からおこるため、まず内膜の心筋細胞が傷害され、外膜側は正常である状況が起こります。電流は内膜側から外膜側へ流れるため、体表面に貼られた電極に向かう方向で流れます。

そのため虚血の初期では心電図の電位全体が基線ごと上昇します。

ただし、この障害心筋と正常心筋の電位の差は心筋が脱分極している時にはなくなってしまいます。つまり心筋が脱分極状態にあるときは、障害心筋も電気的には正常心筋と変わらなくなります。

心電図上の心筋が脱分極している状態はちょうどST部分に相当しますので、ST部分だけは上昇せずにそのままになります。

そのため心電図全体としてみたときに、心筋虚血の初期においてはSTだけが下降してみえるわけです。

この時点で虚血が改善され、心筋の障害が完成されなければ狭心症となります。

さらに虚血が進んで心筋の内膜だけでなく外膜側まで虚血が進んだ場合が心筋梗塞です。

貫壁性梗塞の場合、障害電流は電極から遠ざかる方向に電流が流れるため、心電図全体が基線ごと下降します。そしてSTの部分だけが脱分極状態でそのまま残されて、相対的にSTが上昇してみえるわけです。

(臨床工学技士岡井さんの集中治療ブログ より画像引用)

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