心電図の基本波形
P波
心房の興奮を示します。
正常な場合、右房が興奮して左房が興奮します。このためP波の開始点は右房の興奮の始まりを示し、P波の前2/3が右房の興奮、後ろ2/3が左房の興奮、中央の1/3の部分は両心房の興奮が合わさって形成されます。
右房に負荷がかかるとP波の前2/3の波形成分が増大してみられるため、P波は弁膜症による心房負荷や肺動脈疾患などを判断する際の大事な指標になります。
基準値:幅0.06〜0.10秒(1目盛が0.04秒) 高さ0.25mV(1目盛が0.1mV)
QRS波
両心室筋の興奮を示します。
Q波の始まり〜S波の終わりまでをいいます。正常な心臓では心室筋の興奮は心室中隔の左室側から始まり中隔右室側、右室、左室、心尖部を経て最後は心基部に向かいます。
QRS波の高さ
QRS波の高さが低い(低電位)ときはなにが考えられるでしょうか。
QRS波は心室筋の興奮を示していますので、心室の起電力が低下したときにQRS波の電位は低くなります。左室の力が弱まっている時、左室機能不全の状態ではQRS波が低電位となります。
QRS波の高さは誘導部位により異なりますが、四肢誘導では0.5mV以上、胸部誘導では1mV以上です。これより低い場合は低電位といいます。※参考文献により数値は多少異なります。
肢誘導のみで低電位であれば四肢の浮腫が示唆されますが、心臓の位置や体格などによっても出現します。四肢誘導に加えて胸部誘導でも低電位があれば心筋全体の起電力が低下したか、心臓周囲に伝導障害の原因となるような病態がないか確認する必要があります、
例:肥満、気胸、胸水、心嚢液貯留、粘液水腫、肺気腫、アミロイドーシスなど。
基準値:幅0.06〜0.10秒(1目盛が0.04秒) 高さ誘導部位によって異なる
ST
心室筋の再分極の(興奮からさめる)過程を示しています。
QRS波の終わり〜T波のはじまりまでです。STの始まりの部分をST接合部(J点)といい、このJ点が基線より上がっているか、下がっているかでST変化を判断します。
T波
心室筋の興奮が消退していく過程を示しています。
STに続いてみられるゆるやかな曲線によって描かれる波です。
基準値:幅0.10〜0.25秒(1目盛が0.02秒)
高さ0.5mV(四肢誘導)1.0mV(胸部誘導)
PQ間隔
房室伝導時間ともいわれます。
P波のはじまり〜Q波のはじまりまでの時間です。心房の興奮の始まりからそれが房室結節、ヒス束を通り、心室筋の興奮が始まるまでの時間を示しています。
基準値:幅0.12〜0.20秒
QT間隔
心室の興奮の始まりから興奮の消退までを示しています。
Q波のはじまり〜T波のおわりまでの時間です。
基準値:幅0.30〜0.45秒