12誘導心電図の見方
①調律
まずは正常洞調律(サイナスリズム)かどうかを判断します。
洞結節で発生した電気的興奮が正しく心房、房室結節、心室へと伝わり、それにより心電図のP波、QRS波、T波が規則正しく現れ、これが一定のリズムで繰り返されている状態を洞調律といいます。
・リズムは整でP波とQRS波は一定の間隔で1対1で現れている。
・心拍数は60〜100回/分
・PP間隔、PR間隔、RR間隔はそれぞれほぼ一定
・P波は上向き
・T波は上向き
・ST部分は基線と一致して平坦
②P波
P波の基準値 幅:0.06〜0.10秒 高さ:0.25mV
・Ⅰ、Ⅱ、aVF、V1〜6誘導で陽性(上向き)
・P波は洞結節を表しており、P波が出ていれば洞結節から刺激がでたことを表します。
・右房は左房よりも洞結節からの信号が早く伝わるので、P波の前半2/3が右房の興奮、後半2/3が左房の興奮を表し、中央の1/3の部分は両心房の興奮が合わさって形成されています。
・P波の形態は心房負荷や不整脈の判断をする際の指標として重要です。
・右房負荷(三尖弁狭窄症や三尖弁閉鎖不全症の弁膜症、肺動脈疾患により右房に負荷がかかった状態)
→P波の前2/3部分が増大、Ⅱ、Ⅲ、aVF、V1、V2誘導のP波は、幅は正常で振幅が0.25mV以上となり著明な高尖性P波を示します。
・左房負荷(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症の弁膜症、左心不全などで左房に負荷がかかった状態)
→P波の後ろ2/3が増大、Ⅰ、Ⅱ誘導のP波は振幅は正常で幅が2.5mm以上の二峰性P波となります。
③PQ間隔
PQ間隔の基準値 0.12秒≦PQ間隔≦0.20秒
・PQ時間は洞結節から房室結節まで電気が流れる時間です。
(心房の興奮開始〜心室の興奮開始までの時間)
・PQ時間の延長は心房から心室までの電気の通りが悪くなり、時間が長くなっていることを示しています。
④QRS波
QRS波の基準値 幅:0.06〜0.10秒 高さ:誘導部位によって異なる
・QRS波の幅は心室に電気的興奮が始まってからすべての心室筋が脱分極するまでの時間を表しています。
・QRS波形は疾患により、また心電図を記録する誘導によって様々な形を示します。
・そのためQRS波形を表現するために以下のような共通の取り決めがなされています。
・振幅が小さいときには小文字(q,r,s)を用います。
・1つのQRS波の中に同じ呼び名の波形が2つ以上あるときには2番目に現れた波形に「’」(ダッシュ)をつけます。
⑤ST
・心電図では基本的にST部分は基線に一致します。
・基線よりもST部分が上方にある場合をST上昇、下方にある場合をST低下とよびます。
⑥T波
・Ⅰ、Ⅱ、aVL、aVF、V3〜V6で上向き(陽性)、aVRで下向き(陰性)が正常です。
・T波は収縮する心臓が元に戻る時(弛緩)できる波です。
・心肥大や心筋障害があるとスムーズに弛緩できないためT波に異常がでてきます。
・肥大型心筋症や心内膜下梗塞の場合には巨大陰性T波といわれる通常よりも先鋭で大きな下向きのT波がみられます。
⑦QT間隔
QT間隔の基準値:0.30〜0.45秒
・Q波の始まりからT波の終わりまでの時間がQT間隔です。
・房室結節を通過した電気的刺激が心室内刺激伝導系を伝播して心室全体の心筋を脱分極させた後、心室筋の再分極過程が終了するまでの時間をいいます。