鉄欠乏性貧血
鉄は赤血球におけるヘモグロビン合成、細胞内の酸化還元反応、細胞増殖のために必須なものです。
健常成人の総鉄量は約4gでこのうち約70%が赤血球の中でヘモグロビンの一部に組み込まれ、酸素の運搬に役立っています。
古くなった赤血球は食細胞であるマクロファージによって処理されます。その結果、約25%の鉄が肝臓や脾臓の中でフェリチンというタンパクにくっついて貯蔵鉄として蓄えられます。
フェリチンは貯蔵鉄の量を反映します。
血清の中では鉄はトランスフェリンに結合して運搬されます。これが血清鉄として測定されます。
血清鉄はトランスフェリンに結合している鉄の量のことです。
血清中のトランスフェリンの全体の濃度は総鉄結合能(TIBC)で示され、TIBCと血清鉄の値から、血清中の鉄飽和度(%)(=血清鉄/TIBC×100)が計算されます。
UIBC(不飽和鉄結合能)は未結合のトランスフェリンと結合しうる鉄の量のことで、正常ではトランスフェリンの約1/3が鉄と結合し残りは未結合で存在します。
TIBC=血清鉄+UIBC
体内の鉄が不足すると赤血球の生産量が低下します。
これを鉄欠乏性貧血といいます。
この病気では血清鉄が低くなることに加え、トランスフェリンが増加するため、鉄飽和度は低下します。また体内の貯蔵鉄が使われて不足するため、血清フェリチン値は低くなります。
この場合なぜ鉄が不足しているのか、どこからか出血しているのか、などの原因を検索する必要があります。
慢性の病気でも貧血を伴うことがあります。
これは貯蔵鉄をうまく利用できないことが原因と考えられています。
この場合血清鉄の値は鉄欠乏性貧血と同様に低くなりますが、TIBCも低くなるため鉄飽和度は上昇し、血清フェリチン値は高い値を示します。